ゆかのんかズよみごと!!

読んだこと見たことを思い出したらお知らせします。

今日の一作vol.338 夜見師…死して尚苦しみは続くのか

夜見師 (角川ホラー文庫)

夜見師 (角川ホラー文庫)

夜見師2 (角川ホラー文庫)

夜見師2 (角川ホラー文庫)

男子は20代前半には突然死んでしまうという呪われた家系の最後の男子・五明輝はせめて死ぬまでに唯一の身内の妹のために稼げるだけ稼いでおこうとホストや便利屋をしていた。
ある日輝はある家に住み込みでの家政夫を頼まれる。給料は破格の値。二つ返事で行ってみると、その家にいたのは、車椅子がまるで玉座に見えるような威厳のある色男。多々良克彦という彼の世話と家の掃除、そして本殿でのあることのために多々良のアシストをすることが主な仕事だった。
そしてそのあることとは、本殿に封じられた多数の祟り神を始末する夜見師・多々良のアシスト。
祟り神一体ずつに相対しそのサワリをうけるため、霊的に対応力があることが求められる。
破格の給料なのも頷ける消耗にも輝はメゲず家事と夜見師のアシストをするが、輝にかけられている呪いの元にも関わる祟り神を始末することになり。


ぐいぐい引き込まれます。
ホラー文庫ですから、霊的な話ばかりです。でも怖いというよりも、怨霊になってしまった人間の悲しみや憎しみなど、むしろ人間的な切なさを感じます。
そして祓い屋とも陰陽師とかとも違う新しい夜見師というスタンス。すごい!

まだまだ祟り神を封じた箱はあり、どんどん始末していかないと、実は死んでるゾンビな多々良さんは体が壊れてしまう前になんとかしないと、祟り神が
残ってしまうと大変なことになるので、焦ってます。
始めは輝と一線引いて対していたけど、呪いも解け、祟り神に情を持ってしまう輝を遠ざけようとします。
が、輝も望んだ訳でもないのに夜見師になってしまった多々良は恩人であり、自分にしかできないアシストを輝を犠牲にしてしまうのではと遠ざけてくれる多々良の俺様ながらの優しさをもっている人で、そんな彼に居場所を見いだした訳です。
そんな2人の意志疎通の無さの、でもなんでかわかっちゃうとこが好きですねー

なんか御手洗と石岡くんの関係に似ている。
相棒(見た目美青年多々良さんは実年齢かなり年なので相棒扱いは嫌がりそう(笑))の地位を確保してどや顔の輝は何だか可愛いです。
まだまだ続くでしょうけど、全て始末できて最後多々良さんがいなくなるだろう展開は想像つくけど、しっかり中村先生は期待通りに書いてくれるでしょう。
何年後に読めるのか、今からドキドキします。
早く続きが読みたいです。

今日の一作vol.337 少女漫画家の初恋ランウェイ…定番ながらも恋愛と仕事のサクセスストーリーは面白い

少女漫画家の初恋ランウェイ (プリズム文庫)

少女漫画家の初恋ランウェイ (プリズム文庫)

実力はあるものの掲載誌が廃刊になるなどあとがない漫画家の渉。
少女漫画誌に拾われたものの、恋愛経験のない渉にとって求められた「ヒロインと社長の恋愛」はハードルが高すぎ。
そこで高級ホテルのラウンジでセレブのお見合いをリサーチしに行くが、そこでモデルになりそうな真っ赤な薔薇の花束を持って現れたスーツ姿の男の揉め事に巻き込まれ、何故か男・恩田の家に同居して渉は恩田をモデルに漫画を、デザイナー兼オーナー社長の恩田は渉をモデルに次のブランドイメージを作っていくことに。背に腹は代えられず同居して過ごすと案外といい刺激となりお互い仕事が進む。そして漫画のように渉の気持ちもどんどん恩田に惹かれていって。


お互い最初は何も意識してないのにどんどん気持ちが通い合っていくのが、自然のながれのように書かれていて、読みやすく面白かった。何も文句はありません。
難があるなら、もう少しイラストで、渉を可愛く描いてほしかったかな。
ボサボサの渉が恩田によって垢抜けるようになる、というのにあまりイケてるようにはみえないので。
あとはハムスターのイラストをもっと(笑)
それと漫画が売れてサイン会とかで渉の顔出しになって恩田が嫉妬するなんてのも、もし番外編なんかでたら読みたい。
そして秘書の石黒さんももう少し出番がほしい。脇役好きなんで。

今日の一作vol.336 愛を与える獣たち…愛されたい願いが愛したい本能を引き寄せた

愛を与える獣達 無骨な熊と王者の獅子と異界の『番』

愛を与える獣達 無骨な熊と王者の獅子と異界の『番』

愛を与える獣達 むすんだ絆と愛しき『番』

愛を与える獣達 むすんだ絆と愛しき『番』

40才の外科医のチカユキはある日突然異世界へと飛ばされてしまった。
しかもそこは獣人が支配する世界で少年の姿になっていたチカユキは珍しいヒト族として捕らえられ、性奴隷として過酷な日々を送ることになった。
飽きられては売られ犯され暴力を加えられて死にたいとは思っても魔法具による呪で自死も出来ず、これで売れなければ廃棄処分寸前でチカユキを買ったのは熊族のゲイル。
ゲイルはチカユキを連れ帰り治療を施してくれた。そしてゲイルとともに獅子族のダグラスの二人に求愛される。チカユキは二人の番でそれを受け入れて2人を伴侶とする。
チカユキの魔力は高く治癒力を施すことができ、その力を狙われる可能性もあるため二人の故郷のレオニダス国へ移る。
実はダグラスは王弟で、ゲイルは名高い騎士だった。怪我がもとで、奴隷制の残っているキャタルトン国へ潜入捜査のようなことをしていたのだったが、チカユキにより2人を治療もできた。
レオニダス国でチカユキは2人の両親らに会い受け入れられ、やがて二人の子供も授かることに。
チカユキがもたらす知識や癒やし、ゲイルとダグラスたちの深い愛情。
元の世界では同性愛者であることで、孤独に生きていたが、異世界で生きていくことを幸せに思えたチカユキの選んだ道は。

ファンタジーです。
何でもありの世界です。
でも、その根本は愛でしょうか。
3センチほどの分厚さの本を手にとり中身をパラパラとめくり、モフモフは別段好きじゃないし、イラストはあんまり好みじゃない。お値段もボリュームの分だけある。でも何だか読んでみたい。かなり迷って購入しました。

面白かったです!!
不思議な世界観ですが、魔法力万歳の世界ですが、筋道たってますし、よくある竜とか、獅子王ではなく熊ですよ(笑)
ゲイルさんの無骨な顔に熊耳。
ダグラスさん獅子ですけど、タラしですし(笑)
チカユキがこの世界にやってきた訳も後々解明されますが、そこにいたるまでのもっていきかたや、目線がチカユキやゲイルやダグラスと色々変わるけどそれがそれぞれの想いをよくわかるようになっていて、読み応えありました。
そして魔力によって子供も産めるのですが、チビたちが可愛い。
ちっこいのをばかでかい獣人がそーっと抱っこしてるのなんて可愛いすぎるでしょー。
その他登場人物それぞれが個性的で、読みながらニヤニヤしてしまいました。今笑ってたよね自分、とつい周りをみてしまうこと何回も。
まあ一読あれ。
どうしてもモフモフとやや獣姦気味なのがダメという方以外はファンタジー好きにはたまらんものが。
最初チカユキが悲惨な目にあってますけど、六青さんの書く話や『ANIMAL X』ほど悲惨ではないですね。

出来れば番外編で、子供たちの成長を読みたいです。
小編で何年後か大人になった本編後に生まれた子供たちの目線でかかれているのも載ってますが、最初のこども、リヒトやヒカル、スイが少年時代はどんなに可愛いらしいだろうと、やはり読みたい。
ショタなのでー(笑)

今日の一作vol.335 恋をするにもほどがある…思いこんだら一直線。でも自分磨きもする子はいつか報われる。

恋をするにもほどがある (ショコラ文庫)

恋をするにもほどがある (ショコラ文庫)

中一の時、母親の再婚により義兄となった亮介に一目惚れした凛。
一緒に暮らしたのは半年間だけでその後は海外へ赴任してしまい、たまに会うだけだったが、それでも亮介は凛に優しく甘く、恋心は募るばかり。16になったら告白しようと決めそしてトライするも弟としかみれないと、相手にされない。
それでも亮介の凛に対する溺愛は変わらず望みは捨てられない。
3年後に日本に帰ってきた亮介に、まずは可愛く役に立つ弟から恋人へとステップアップをはかろうと目論む凛。その時のためにお尻も開発も始めたが、うっかりバイブを亮介に見られてしまい。

かわいくて面白い!
亮介のために頑張る凛と、凛を天使のごとく可愛がる亮介。
お互い一目惚れ同士なのよー。
ただ年がねー。
亮介が勘違いだと思うのも無理はないよ。むしろ受け入れたら犯罪だからね(笑)
でもこういうカラッとした話はいいですね。
ヤッタヤラレタとかどろどろの陰湿なのとかも作者さんによっては味なのですが、幸せで終わるのがやっぱりいいです。
勝手にやってろ的な話ではありますが。
でも、お互いの気持ちを通じあわせるまでの2人の葛藤なんかは読む価値ありますよ。
名倉さんの話はキャラクターもしっかりしてるし話の運びも上手くてついつい読んでしまいます。
攻めがやや変態なのが好きです。
スパダリなのに変態なのがいいです(笑)

今日の一作vol.334 セキュリティ・ブランケット…毛布から抜け出して一歩踏み出して。

セキュリティ・ブランケット 上 (キャラ文庫)

セキュリティ・ブランケット 上 (キャラ文庫)

セキュリティ・ブランケット 下 (キャラ文庫)

セキュリティ・ブランケット 下 (キャラ文庫)

異国の血をひく華やかな見た目とは反対に引っ込み思案な高校生の宮は、幼い頃母が事故死し路頭に迷っていたとき、叔父で新進の陶芸家であるかなえに親代わりに育ててもらった。
のどかな田舎町で暮らす二人。
かなえはガサツな中身とは反対な美人で、心の底では幼なじみで近所のカフェを営む高砂を想ってはいたが、高砂はストレート。親友の関係を壊したくないと秘め、仕事でもパートナーの万座と永らく身体の関係を続けていた。そこへわってはいったのは、宮の友人の国生。
若さ故か押し倒されて国生とも関係を持つ。でも何を置いても宮を一番大事にしていた。
その宮は育ててくれた恩もあり、かなえの為ならなんでもしようと思っていた。
でもこの頃高砂のことが気になり始めていた。
そんなとき、かなえのストーカーのような存在、大陶芸家の孫娘の花房がかなえの留守時に、宮にかなえが自分と結婚してくれないのは宮がいるからだと、宮を刺してしまう。
そんなときでも宮はかなえの為にと公にせず、高砂を頼った。
健気な宮に高砂も心を動かされるが。


上下を通して読みましょう!!
皆が皆互いを思いやって、それぞれの立場や心の変化がすごくよくよくわかる。
登場人物多すぎてそれぞれのことについて語っていたら終わらないので、とにかく読んでもらうしかないでしょう。

タイトルのセキュリティ・ブランケット。
ライナスの毛布のような。
子供は必ず寝るときや安心するモノがありますよねー。
うちの子たちは、毛布やガーゼの肌掛けや羊の抱き枕。
もう無くても大丈夫。手放すということは大人になったのか。

凪良さんがあとがきでも書いてましたが、宮くんが毛布から抜けだして、愛する人達のもとへ自分から近づいていけるようになった、と。
大きな意味で、今後は高砂さんが宮の毛布のように安心を与えてほしいです。
苦労したいい子にはみんな優しくしたいんですよ。
もう親バカ気分ですね。かなえともども。
かなえにもこれからどんどん大きくしっかり成長する国生という毛布がいるもんね。いまは穴がいくつか開いてるけどねー(笑)

今日の一作vol.333 あなたのものにしてください…してもいいよ、じゃなくて、したいと思える人に出逢えた幸運

あなたのものにしてください (プラチナ文庫)

あなたのものにしてください (プラチナ文庫)

あまりにも美形すぎ、幼い頃から男につきまとわれ、極度の男性恐怖症になってしまった瑞希。それなのに恋愛感情を抱いたのは男友達。
男性に触れられると過呼吸まで起こしてしまい、キスなんて問題外なのにゲイなんて自分でも複雑な性指向。
そんな瑞希が出会って今現在お付き合いしているのは、絵本作家の黒川。瑞希が勤める保育園の近所のカフェでたまにバイトにもはいっている。
黒川は瑞希が触れることもできないとしりつつも、その人となり、顔も好きだが心の美しさを好きだといってつき合ってくれる。
プラトニックではあるものの、2人は順調に穏やかな関係を築いていたが、この頃黒川の態度が素っ気なく思う時がある。そして瑞希自身も触れられない自分がもどかしく思うようになり。

黒川の粘り勝ちですかね。
瑞希が自分に自信がもてないのは、やっぱり幼い頃からの体験が主だけど、大学生の時に頑張ってつきあってみようと思った相手にヤッパリ男は無理とひどく言われたのが決定打なんでしょうね。

黒川にしてみれば、いままで相当放蕩な性生活をしてて、たかがセックスとまでいえるくらい。なんで、心から愛しいとおもった瑞希に対しては体の交わりがなくても心だけの恋愛で満足していたし、怖がらせないように慎重にはなっていたけどそれが新鮮で苦にならない。
でも成人男子でたまにぐわっとくる時もあるわけで。耐えている時が瑞希からみると素っ気なくなる。
愛ゆえなんだけどねー。

瑞希もキスまではできるようになり、黒川なら大丈夫なのではと思うようになって。でもその気持ちが、何故大丈夫なのかがちゃんと真のところがわかってなかったからごちゃごちゃとすれ違いましたけど。好きだから抱き合いたくなる。
タイトルなあなたのものにしてくださいと言えるようになりました!!

二人の気持ちを細かく書いてあって、凄く、プラトニックでもいいのだみたいな気持ちになりました。
最近濡れ場がなくても心の濡れ場が合る話のほうが好きです。
Hシーンも必要ないのはとばしてしまう。必要でこちらも掻き立てられるくらいのHシーンになかなかめぐりあえませんので、今回の話はなかなか挑戦だし、良かった。
まあこんなカップルはなかなかいないけどねー。

今日の一作vol.332 バースデー…当たり前のように誕生日を祝える。なんて幸せなことなのか。

バースデー (ディアプラス文庫)

バースデー (ディアプラス文庫)

新聞配達をして生計をたてている百合原は幼い頃に受けた暴行のせいで、解離性同一性障害、いわゆる多重人格を発し事件を起こしていた。百合原には覚えがないことだが、その事件によりカウンセリングを受け、現在は落ち着いていた。
そんなある日担当エリアのマンションに越してきた滝本という男に出会う。
彼は知人が百合原に似ているといい、食事に誘ってくれたりするようになった。
独りでひっそりと生きていくつもりだったのに、やはり寂しかったのか、滝本と交流を持てるのが嬉しかった。
そんな中、滝本を部屋にあげた時、百合原の足の中指の欠損を見られ驚愕される。
実は滝本は百合原の交代人格の三希と付き合っていたのだった。
もう会わないほうがいいと、連絡を経って百合原は滝本を好きだったのだと気付く。そして三希が滝本と付き合っていた頃の記憶を夢として見るように。三希もまた滝本を本気で好きだったのだと実感する。
滝本もまた百合原が三希だったと知り、事件のことを調べる。エキセントリックな三希も好きだったが、穏やかな百合原をも好きになっていた。だが、百合原のことを思い会わずにいようとしたが、偶然会ってしまい、抑えることができずに抱き合ってしまう。
再び付き合うようになってしばらくして、滝本には三希が現れているのがわかった。何も問題ないならいいがと百合原には教えなかったが。


切ないけど良かった!!
こういう悲惨な経験の話は嫌な気分になるとか、主役達に共感はできても同調はできないのに、この話では気持ちが荒れることもなく、読み込むことができました。百合原も三希も互いを疎むことなく、思いやれていて、消えてしまうのは複雑だけど元はひとりの人間なのだから、百合原の中に在るのだろうと。
滝本も三希と百合原二人を受け入れて愛しているからこそ三希も百合原の中に統一されたのだと思う。

まあこういう話の中なので作者の意向というか手腕によるものなのだけど、切なさとあたたかさをちゃんと留めてくれて今年の一押しになりそうな作品だと思います。

百合原の両親による虐待ではなく、失踪するまでちゃんと愛情を受けていたからこそ百合原が元は穏やかで素直な性格で三希も百合原を守るために生まれたわけで。
犯人に復讐をするというのも事件の被害者という目線をちゃんと理解しやすいように挟んでもあり、葛藤がよくわかります。

三希の生まれた日はわからないけど、彼の希みは好きな人と猫を飼って暮らし誕生日を祝うことができるような穏やかな日々。
三希としてではないけど、百合原の中に気配は生きていて、滝本とその夢は叶う。すごくラストが嬉しい話でした。