ゆかのんかズよみごと!!

読んだこと見たことを思い出したらお知らせします。

今日の一作vol. 374 ご先祖様は吸血鬼┅ご飯が美味しく食べられるのは幸せ

 

ご先祖様は吸血鬼 (ディアプラス文庫)

ご先祖様は吸血鬼 (ディアプラス文庫)

 

食べることが大好きな健太は、就職が決まり先輩に連れてきてもらった料亭で板前·志波の作り出す料理に感動し、プロポーズ紛いの言葉を口走るほど。また来ようと決意する。

だが、その翌朝から健太は味覚障害になる。何を食べても飲んでも砂や泥のような味に。愕然としているなかで志波の料理を思い出し、駄目元で行ってみると、彼の作るものは全て素晴らしく美味しかった。

なぜなのか、両親が言うには、先祖に吸血鬼がいて恋をして味覚障害の症状が出ると先祖かえりといわれ、つがいとなる相手の光露を吸うことで次第に味覚が戻る、らしいとのこと。

健太は志波の料理以外は食べられなくなり、段々と衰弱していく。会うと喉が渇き首筋に吸い付きたくなる。

だから会うのも避けていたけど志波に見つかり事情を問い詰められ吸血鬼かもとこぼすと、信じられないにしろ吸ってみろと首筋をだされ、限界だった健太は吸い付き、その甘露にまるで酔ったかのように。身体も疼き志波と抱き合ってしまうが。

 

いわゆる吸血鬼とは違います。

結局未確認生物だかなんだかに遺伝子レベルで寄生されているのでは?ということですが、健太の健気さや食いっぷりの良さに、志波が惹かれてくれてよかった。

健太が食べるシーンでは一緒になって食べているような気がして、凄く充足感がありました。お米の炊きたて食べたい。

そして味覚障害は一度似たようなことがあったのでわかります。

何の味も感じなくて慌てて病院いきました。

幸いすぐに戻りましたけど、耳鼻咽喉科なんだなあと変な感想を抱きました。

それはおいといて、健太が自分では自覚してないのに細胞レベルで恋をしてたということが何かじわりました。

胃袋掴まれたというか。そこから志波さんのことを意識しはじめるというのはいいなあ。どこに萌えを感じるか。人それぞれなのがいいです。

そして、後編?の健太が縮んでしまい、子供の視点というか、子供の体では食べるということがどれたけ大変なのかを書かれていて、そこまで考えずに子育てしてたわーとつい反省してしまいました。

海野さんらしいやや変化球の話でしたがほのぼのとして面白かった。

ところでどうして渋谷?

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の一作vol. 373 八月三日┅まとまりすぎて物足りない

 

八月三日 (プラチナ文庫)

八月三日 (プラチナ文庫)

 

介護士の一ノ瀬は高次脳機能障害を抱える人の有料施設で働くことになり、担当になった白崎和人という同じ年の青年に心ひかれる。

彼·白崎は大学2年の夏に交通事故にあい、重い高次脳機能障害を抱えることになってしまう。彼は記憶障害で、事故以前の記憶はあるものの、それ以降は14時間たつと記憶がリセットされてしまい、一ノ瀬は毎日その状況を説明し、彼がショックを受け苦悩するのを見守る日々。

少しでも彼が辛くないように、日記をつけるように提案したり、食べ物を工夫したりと色々してみる。

それでもやはり永遠に続くだろう同じ毎日の繰り返しに、自分の無力さを実感する。

そして彼が事故にあった八月三日が今年もやってきた。

その日出勤途中一ノ瀬は暴走車にぶつけられてしまう。意識がうすれるなか、今自分が死んだら白崎はどうなるのか、と強く思ったせいなのか、気がつくと10年前の白崎の地元にいた。

すぐにその事実に気付き、もしかしたら白崎を救えるのではと、一ノ瀬は高校生の白崎に会いに行く。

 

 

とてもキレイにまとまっています。

時間移動のタイミングも、どうすれば白崎を事故にあわせないですむかとか、これが一度きりの一ノ瀬にとっても生死をかけた事態なこと。そして白崎を見守ってきた一ノ瀬が白崎に惹かれていくようすなど。

確かに上手いのですが、うまくいきすぎててちょっと物足りない。

もう少しハラハラしたいし、白崎の気持ちがあまり見えない。一ノ瀬のことを好きなんだろうなあと思える場面もあるけど、いまいちうわべだけの気持ちしかない。

私ひねくれているので、途中予想で、立場逆転するのかと思った。タイムスリップして白崎に忠告して白崎は事故にあわない。でも一ノ瀬は事故にあってる。死にはしないけど記憶障害に。看護士になった白崎と再会。新しい記憶はないけど、今までの記憶があるから一ノ瀬も白崎と生きていける。みたいな。

記憶がリセットされてしまう話、BL で二作ほど読みましたが、毎日恋におちるみたいな書き方をされてる話でそちらの印象が強すぎなんでしょうか。

 

この話は「君の名は」的な要素が多くて、万人には受けそうだけど、なんか一ノ瀬がひとりで頑張ってる気がして感情移入できませんでした。😥

お話は読みやすいしまとまってて上手いです。この先もっとパンチの効いた話を期待します。

 

 

今日の一作vol.372 飼い猫は彪┅破滅愛。これもひとつの形。でも個人的に受け入れ難し

 

飼い猫は彪 (プラチナ文庫)

飼い猫は彪 (プラチナ文庫)

 

夜の帝王と呼ばれカリスマホストとなった亮一は引退後は自身のホストクラブを経営。

気に入った相手を自分に夢中にさせてから手のひら返したように冷たくし傷つけ壊れていくのをみて快感を覚える歪んだ性癖を持っていた。

ある日、公園で野宿をしようとしていた彰広を拾い居候させ、自分の店で働かせると、彰広はあっという間にナンバーワンに。

悪い癖で、気に入った彰広をさりげなく堕とし、そして彰広の執着もまた酷くなる。それでもしばらくは微妙な均衡でいたのだが、新しく入ったホスト、カズキが亮一の気をひくと、彰広は壊れ亮一を食らうように振る舞い、亮一は逆の立場になったことに憤るとともに自分のためにそこまで壊れた彰広に、愛し愛されていることに喜ぶ。

そしてわざとカズキに抱かれ、彰広が激して首を締めてくることに快感を覚えるのだった。

 

理解はできるけど、自分はこの愛の形は好まない。愛しあっているのに、傷つけることしかできないのは辛いばかり。

亮一の生い立ちからそんな歪んだ愛しか受け取れない確かめられないのはわかるけど。

まあ、亮一はそういう性癖なんでいいけど彰広は堕ちて惚れてしまったばかりに┅

そして一番かわいそうなのはカズキ。

二人の間でだしに使われただけ。かわいそー。

 

いつか、彰広は亮一を殺してしまって、多分自分も。

終わりは見えているのに、亮一はそうなる彰広を見たい訳で。

狂愛ですね。

重いですね。

わからなくはない。

でも救いのある愛のほうがいいなあ。

 

紙デビューの作家さんですが、上手いです。ですが、爽やかな話を希望です。

 

 

 

今日の一作vol. 371 梟はなぜ烏を黒く染めたのか┅惚れたが負け

 

梟はなぜ烏を黒く染めたのか (二見書房 シャレード文庫)

梟はなぜ烏を黒く染めたのか (二見書房 シャレード文庫)

 

鳥人世界の話。

与党「はばたけ」のスズメ派議員·鳥貝政策秘書をしている黒羽。カラス属の黒羽はその黒髪と黒瞳を自分では辛気臭くコンプレックスに思っていた。その根幹は幼なじみともいえる同じ党の議員·梟属の深森。彼とは先祖代々犬猿の仲、父親同士は寄ると喧嘩、だから格好いいなと思いつつも関心ないように振る舞う。黒羽とは違う男らしさに憧れているからこその劣等感だが、そんな黒羽に深森は俺のところに来いと誘ってくる。

断りながらも何かと仕事で会うが、そんな時、同じ秘書仲間のメールを偶然見てしまい、その内容に疑惑を持つ。汚職の匂いがするそのメールについて黒羽は調べ始め、深森にも相談して証拠を集めだすが、引ったくりにあったり暴漢に襲われたりと、どんどん身の危険がせまってきて。

 

 

中原さんお得意のサスペンス的な内容ですが、鳥人の世界なので、目属とか名前とか特性とかで何となく和んでしまいます。

黒羽が音痴なのもよいです。つい光モノを集めてしまうのとか、ヤケイ属が夜明けとともにコケーと雄叫びあけるのとか、面白い。

政治の話なんで、興味もてないかなーと思ってたら、今の日本の政治体制と同じで、かつ揶揄してるのがなるほどと納得できてよくわかりましたね。

その辺詳しい人にはものたりないかもしれないけど、キャラの肉付けも話の進行もラブの容量もバランスよくて満足です。

 

 

 

 

今日の一作vol. 370 後宮の烏┅理不尽にも辿り着いた地位で互いに独り

 

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

烏妃は後宮の奥深く夜明宮にいながら帝に侍ることはない。

ただ在て、その力をもって宮内を護ることを使命とす。

烏妃になった寿雪のもとへ帝である高峻がやってきてある頼みごとをする。寿雪は最初は断ったが、高峻の帝らしくない振る舞いとその裏に見え隠れする感情に、らしくなく気を惹かれ、引き受ける。

やがて企みまでもが明らかになり、高峻と寿雪の生い立ちと運命的な二人の立場に、烏妃寿雪としてどう立ち向かうのか。

 

これはミステリーとして位置付ければいいのか。烏妃の謎。事件の謎。リンクしながら解かれていくのは面白い。

そして運命に導かれて出会った二人。

まあ、恋愛的要素はそこはかとなく。これからでしょうかね。

もっと難しく後宮の世界を描いているのかと思ったら、寿雪も高峻もカラリとしていて、それでもシビアで、思うより人間的で。

烏妃の力は失せ物探しや迷える魂を楽土へ送るためで、政治に力は使わないことが、原則だったのに、独りでいなくてはいけなかったのに、さみしすぎて、優しすぎて。

それぞれの個性が、書き込んであるわけでもないのに、言動から知れる。

他にも後宮モノは読んでますけど、文字数は少ないのに様子がよくわかる。

すんなり入ってくるのは凄いですね。

二巻もでてるので、これから読みます。

 

 

 

今日の一作vol. 369 狂犬ドルチェ┅犬、キタ━(゚∀゚)━!

 

狂犬ドルチェ (プラチナ文庫)

狂犬ドルチェ (プラチナ文庫)

 

イタリアとのハーフで幼い頃イタリアに住んでいた玲央。家から無断で出て迷子になっていた玲央を助けてくれたのは黒い犬、と玲央は思っていたが、実は孤児の少年ラウル。

天使のような玲央にクッキーをもらい、すっかり骨抜きにされたラウルは、玲央のために生きることを決める。

日本に帰りパティシエになった玲央。その王子様のような容貌を店の宣伝に使われ、先輩たちから苛められ、店を辞めざるをえなかった。辞めたその日にホテルのパティスリーの支配人という男、ラウルに新店舗へと招かれる。玲央はラウルのことは初対面としか思っていなかった。

不審者に襲われ助けてくれたラウルの腕に安堵を覚える玲央。豪華な社宅に世話係だからと一緒に住み、何から何まで甘やかされる。

ラウルは玲央の作るものすべてを貪り、玲央自身をも貪り尽くしたいと求められるが。

 

犬です。犬。

玲央を自分のものにするためには、玲央さえも騙して画策します。悪賢い犬。

自分を虜にし、自分を煽る玲央が悪いんですよ的な理屈で玲央をとろとろに甘やかして舐め回してぱっくり食べちゃいます。

4日もやりつづけるって!!

結局、お家騒動に便乗してラウルは玲央を自分だけ

のものにしますが、まあ玲央も赦しちゃってる時点で終わってます。

まあラブラブなんで。

玲央の見てないところでラウルがどんなことをしてたのか、もう少し知りたいかな。でもどうせ玲央可愛いで動いているので一周回ってくるだけか。

宮緒さん、犬系の攻め何作目だろう。すきよねー。

 

 

 

 

 

今日の一作vol. 368 営繕かるかや怪異譚┅そふとに怖い

 

営繕かるかや怪異譚 (角川文庫)

営繕かるかや怪異譚 (角川文庫)

 

家で何か奇妙なことが起こる。工務店や植木屋、僧侶に相談すると紹介される営繕屋、かるかやの尾端。

霊能者ではなく普通の営繕屋。ちょっとだけお悩みの解決になるような直しをして終わるだけ。でもそれから奇妙なことはなくなる。

小作が六作品。

 

 

夜には読みたくないですね。

昼間でも怖いけど。

小野さんの作品はどうしてこんなに怖いのでしょう。

ホラーと銘打ってない、十二国記はファンタジーなのに、そこはかとなく怖い。

残穢はもちろん怖い(読んでないけど、映画の予告だけで怖い)しね。

すべてが日本の怪異を表現してる。おどろおどろしい。

てもさすがに上手い。

怖さの中に切なさとか侘しさが滲んでる。