ゆかのんかズよみごと!!

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今日の一作vol.322 キス…感情は育つもの。ターニングポイントで立ち止まるか進むのか。

キス (ディアプラス文庫)

キス (ディアプラス文庫)

苑にとって家にいることも学校にいることも落ち着くことはない。両親は常に喧嘩をし苑が何をしても気に入らない。同級生はその名字をからかい、苑は息を潜めてやり過ごす。そんな苑に構うのはクラスの人気者の明渡。
どうして苑に構うのかは分からなかったが、2人はある夏の日、神社でキスをするカップルを目撃する。
苑は刺激的過ぎたのか鼻血を出してシャツを汚してしまう。
明渡の家で洗濯してもらうが明渡の親戚の果菜子と出会う。果菜子は苑の事情は知らない為に気軽にお祭りに誘ってくれた。明渡の太鼓を見に行くだけとお祭りに行くと案の定同級生にからかわれて逃げ帰ると家では喧嘩してばかりの両親が情事の真っ最中で追い払われてしまう。追い詰められ消えてしまいたいと雨の降り出す中山奥へと足をすすめる。すると追ってきた明渡とともに土砂崩れに巻き込まれ明渡が頭に怪我をしてしまう。パニックになった苑に明渡はキスをしてきて。
何年たっても明渡は苑の側にいて、キスをして、やがて苑が明渡を好きになった時、明渡は。

タイトルのキスはたいして重要ではないかと。
確かにキスをきっかけに、ということですが、蛇抜(苑の名字で、土砂崩れという意味)のほうが重要。
まあタイトルが蛇抜では一穂さんぽくはならないけど。
明渡が始め苑を構ってたのは大して意味もなく、ほっとけないというのと、うるさいことを言わないからという、それだけ。それが唐突に恋に変わります。
その成り行きは最後まで読んでみるとわかるのですが、その執着で明渡を友達としてしか思ってなかった苑を無理やりモノにしてしまう。
苑は性に対しての嫌悪感はあったが、明渡にたいしては、自分のようなものを欲しいというならくれてもいいくらいと思っていた。明渡の云う通りにして働き金を貯めて家を出ることにし、東京で二人で暮らす。
苑は明渡に依存まではいかないけど、こんな自分を、という気持ちから始まっているので東京で働くようになって、自分に自信も出来て、その辺は明渡に感謝だね。でも明渡の俺様な性格は好かん。
そして明渡の苑への感情がなくなってしまったことがどれだけ苑を傷つけたのか。理不尽や!
そりゃ明渡のせいではないけどね!
でも理不尽や!
苑がちゃんと自立してくれて良かった。
東京へ出てくる前の苑だったらまた消えたくなるだろうに。
まあまあ、読んで下さいな。
私は明渡は好きじゃないけどね。
ラスト、苑は何だかんだ言っても追いかけてきた明渡が、俺様なこといいつつも震える手で苑を掴んでくるのをみないふりして受け入れるのだろうけどね。
明渡の、「リセットされたらまた始めからやり直す」というセリフはよかった。

一穂さんの話はじっくり書き込んでるから読み込んでいかなきゃならない。
それがいいときもあるし笙に合わない時もある。
今回は私の好みから三割ほどのずれがある。