ゆかのんかズよみごと!!

読んだこと見たことを思い出したらお知らせします。

今日の一作vol.334 セキュリティ・ブランケット…毛布から抜け出して一歩踏み出して。

セキュリティ・ブランケット 上 (キャラ文庫)

セキュリティ・ブランケット 上 (キャラ文庫)

セキュリティ・ブランケット 下 (キャラ文庫)

セキュリティ・ブランケット 下 (キャラ文庫)

異国の血をひく華やかな見た目とは反対に引っ込み思案な高校生の宮は、幼い頃母が事故死し路頭に迷っていたとき、叔父で新進の陶芸家であるかなえに親代わりに育ててもらった。
のどかな田舎町で暮らす二人。
かなえはガサツな中身とは反対な美人で、心の底では幼なじみで近所のカフェを営む高砂を想ってはいたが、高砂はストレート。親友の関係を壊したくないと秘め、仕事でもパートナーの万座と永らく身体の関係を続けていた。そこへわってはいったのは、宮の友人の国生。
若さ故か押し倒されて国生とも関係を持つ。でも何を置いても宮を一番大事にしていた。
その宮は育ててくれた恩もあり、かなえの為ならなんでもしようと思っていた。
でもこの頃高砂のことが気になり始めていた。
そんなとき、かなえのストーカーのような存在、大陶芸家の孫娘の花房がかなえの留守時に、宮にかなえが自分と結婚してくれないのは宮がいるからだと、宮を刺してしまう。
そんなときでも宮はかなえの為にと公にせず、高砂を頼った。
健気な宮に高砂も心を動かされるが。


上下を通して読みましょう!!
皆が皆互いを思いやって、それぞれの立場や心の変化がすごくよくよくわかる。
登場人物多すぎてそれぞれのことについて語っていたら終わらないので、とにかく読んでもらうしかないでしょう。

タイトルのセキュリティ・ブランケット。
ライナスの毛布のような。
子供は必ず寝るときや安心するモノがありますよねー。
うちの子たちは、毛布やガーゼの肌掛けや羊の抱き枕。
もう無くても大丈夫。手放すということは大人になったのか。

凪良さんがあとがきでも書いてましたが、宮くんが毛布から抜けだして、愛する人達のもとへ自分から近づいていけるようになった、と。
大きな意味で、今後は高砂さんが宮の毛布のように安心を与えてほしいです。
苦労したいい子にはみんな優しくしたいんですよ。
もう親バカ気分ですね。かなえともども。
かなえにもこれからどんどん大きくしっかり成長する国生という毛布がいるもんね。いまは穴がいくつか開いてるけどねー(笑)

今日の一作vol.333 あなたのものにしてください…してもいいよ、じゃなくて、したいと思える人に出逢えた幸運

あなたのものにしてください (プラチナ文庫)

あなたのものにしてください (プラチナ文庫)

あまりにも美形すぎ、幼い頃から男につきまとわれ、極度の男性恐怖症になってしまった瑞希。それなのに恋愛感情を抱いたのは男友達。
男性に触れられると過呼吸まで起こしてしまい、キスなんて問題外なのにゲイなんて自分でも複雑な性指向。
そんな瑞希が出会って今現在お付き合いしているのは、絵本作家の黒川。瑞希が勤める保育園の近所のカフェでたまにバイトにもはいっている。
黒川は瑞希が触れることもできないとしりつつも、その人となり、顔も好きだが心の美しさを好きだといってつき合ってくれる。
プラトニックではあるものの、2人は順調に穏やかな関係を築いていたが、この頃黒川の態度が素っ気なく思う時がある。そして瑞希自身も触れられない自分がもどかしく思うようになり。

黒川の粘り勝ちですかね。
瑞希が自分に自信がもてないのは、やっぱり幼い頃からの体験が主だけど、大学生の時に頑張ってつきあってみようと思った相手にヤッパリ男は無理とひどく言われたのが決定打なんでしょうね。

黒川にしてみれば、いままで相当放蕩な性生活をしてて、たかがセックスとまでいえるくらい。なんで、心から愛しいとおもった瑞希に対しては体の交わりがなくても心だけの恋愛で満足していたし、怖がらせないように慎重にはなっていたけどそれが新鮮で苦にならない。
でも成人男子でたまにぐわっとくる時もあるわけで。耐えている時が瑞希からみると素っ気なくなる。
愛ゆえなんだけどねー。

瑞希もキスまではできるようになり、黒川なら大丈夫なのではと思うようになって。でもその気持ちが、何故大丈夫なのかがちゃんと真のところがわかってなかったからごちゃごちゃとすれ違いましたけど。好きだから抱き合いたくなる。
タイトルなあなたのものにしてくださいと言えるようになりました!!

二人の気持ちを細かく書いてあって、凄く、プラトニックでもいいのだみたいな気持ちになりました。
最近濡れ場がなくても心の濡れ場が合る話のほうが好きです。
Hシーンも必要ないのはとばしてしまう。必要でこちらも掻き立てられるくらいのHシーンになかなかめぐりあえませんので、今回の話はなかなか挑戦だし、良かった。
まあこんなカップルはなかなかいないけどねー。

今日の一作vol.332 バースデー…当たり前のように誕生日を祝える。なんて幸せなことなのか。

バースデー (ディアプラス文庫)

バースデー (ディアプラス文庫)

新聞配達をして生計をたてている百合原は幼い頃に受けた暴行のせいで、解離性同一性障害、いわゆる多重人格を発し事件を起こしていた。百合原には覚えがないことだが、その事件によりカウンセリングを受け、現在は落ち着いていた。
そんなある日担当エリアのマンションに越してきた滝本という男に出会う。
彼は知人が百合原に似ているといい、食事に誘ってくれたりするようになった。
独りでひっそりと生きていくつもりだったのに、やはり寂しかったのか、滝本と交流を持てるのが嬉しかった。
そんな中、滝本を部屋にあげた時、百合原の足の中指の欠損を見られ驚愕される。
実は滝本は百合原の交代人格の三希と付き合っていたのだった。
もう会わないほうがいいと、連絡を経って百合原は滝本を好きだったのだと気付く。そして三希が滝本と付き合っていた頃の記憶を夢として見るように。三希もまた滝本を本気で好きだったのだと実感する。
滝本もまた百合原が三希だったと知り、事件のことを調べる。エキセントリックな三希も好きだったが、穏やかな百合原をも好きになっていた。だが、百合原のことを思い会わずにいようとしたが、偶然会ってしまい、抑えることができずに抱き合ってしまう。
再び付き合うようになってしばらくして、滝本には三希が現れているのがわかった。何も問題ないならいいがと百合原には教えなかったが。


切ないけど良かった!!
こういう悲惨な経験の話は嫌な気分になるとか、主役達に共感はできても同調はできないのに、この話では気持ちが荒れることもなく、読み込むことができました。百合原も三希も互いを疎むことなく、思いやれていて、消えてしまうのは複雑だけど元はひとりの人間なのだから、百合原の中に在るのだろうと。
滝本も三希と百合原二人を受け入れて愛しているからこそ三希も百合原の中に統一されたのだと思う。

まあこういう話の中なので作者の意向というか手腕によるものなのだけど、切なさとあたたかさをちゃんと留めてくれて今年の一押しになりそうな作品だと思います。

百合原の両親による虐待ではなく、失踪するまでちゃんと愛情を受けていたからこそ百合原が元は穏やかで素直な性格で三希も百合原を守るために生まれたわけで。
犯人に復讐をするというのも事件の被害者という目線をちゃんと理解しやすいように挟んでもあり、葛藤がよくわかります。

三希の生まれた日はわからないけど、彼の希みは好きな人と猫を飼って暮らし誕生日を祝うことができるような穏やかな日々。
三希としてではないけど、百合原の中に気配は生きていて、滝本とその夢は叶う。すごくラストが嬉しい話でした。

今日の一作vol.331 不機嫌なシンデレラ…人生観を変えるものに出会える幸運

不機嫌なシンデレラ (ショコラ文庫)

不機嫌なシンデレラ (ショコラ文庫)

ハイブランド「Roger Randolph」の社員でエリアマネージャーをしている安西は、以前は専属モデルも勤めていた。
そんな安西が新卒採用の面接で出合った青年・佐山はアパレル希望とは思えないほど垢抜けない根暗な男だったが、ロジャーに対する熱意は感じ、興味を引かれた安西は、自分が引き取るからと採用した。
佐山は研修先では服装も見た目もダサく接客もままならず、在庫管理ばかりさせられていた。
安西は自分が採用したこともあり、取りあえず佐山の見た目を変え、頑なな中身も変えようと構う。すると佐山は、あんたに好かれるにはどうしたらいい?と真っ直ぐぶつかってきて。

シンデレラの要素が二重三重にもりこまれてます。
佐山が安西によって変身していくこと。佐山がロジャーに惹かれてしまった幻の靴。安西が分身とも感じた無くなった靴。
その絡み合いは面白かった。
でも、佐山の頑なさはなんか腹たつくらいです。
アパレルなんだから、自分で外見気にしろよ。
上司を呼び捨てにするなよ。
いきなり告白とかありえない。
モデル時代からのファンだって、そこはかとなく書いてあればまだしも、どこに安西に恋してると分かる場面が?
なんか、無理矢理ラブにもっていかれて、無理矢理ロジャーへの愛を安西と佐山に見せられて、そ、そうなんだ、と思いつつ話が進むので、面白いけど浸りきれないものが、多々ありました。
うまいまとめ方なんですが、佐山の母親との確執とかあるのわかるし最後のほうは必死な佐山が可愛いともおもえましたが、いくら安西が受け入れているとはいえ、なんか違うと思ってしまいました。
私の好みの受ではないのねー。

安西の王子様ぶりはすごいですね。
でも安西に対する蓮谷の言動も有り得ないし安西の対応も流され過ぎ。
その執着のなさが佐山に初めてみせた執着を強調したのだろうけど。

面白いけど、登場人物たちにまったく同調できないのが、なんかなー、と。

今日の一作vol.330 淫夢…知らぬが花、笑顔の下の愛と執着

淫夢 (幻冬舎ルチル文庫)

淫夢 (幻冬舎ルチル文庫)

刑事の折本龍は最近同じ夢を繰り返し見るようになり、悩んでいた。
というのも、その夢は自分が面識のない美少年になり男に抱かれているというものだからだ。
そして同僚で親友の木下葵に内容は言えないが夢を見ると悩みを打ち明ける。
葵の先輩に何故同じ夢を見るのか、分析をしてもらうことになるが、そんな折、殺人事件の関係者の高級男娼の祐貴を訪ねると、彼は龍の夢の中の美少年そっくりだった。
その夜混乱の中見た夢は祐貴と葵の二人に抱かれ、葵が龍を取り合い祐貴の首を締め殺してしまうというものだった。
そして目覚めると、祐貴は夢のように絞殺されたとの一報が。
夢の中のことは現実なのか。ただの夢なのか。


ほほー、なる程、とラストは謎がとけて面白かったです。
でもそれは言えません(笑)
欲をいえば、龍が葵を好きになったことがもっとはっきり書かれてるとよかったかな。
まあ好意はあるだろう、くらいの熱量だったので、すんなりまとまったのがなんとも物足りないかな。
葵のほうも、タチ悪い奴だけど、龍にたいしてのアプローチが、恋情を龍にもっと感じさせる所があれぼ、もっとぞくぞくする話なのに。
主役の2人より脇の才さんと愛くんが目立ってました。
才さんが2人を纏めてくれたわけで、愁堂さんが今ライトノベルで探偵モノ書いてるけど、その影響かなと。
才さん、まるでホームズか御手洗のような位置付けだなあ。

葵はアブナい奴です。
龍には絶対気づいてほしくない~!

今日の一作vol.329 ハロー、マイアリス…縁があればまた会える。脈があれば押して押して押しまくれ!

ハロー、マイアリス (ショコラ文庫)

ハロー、マイアリス (ショコラ文庫)

大学生の有泉真聡はある日通りすがりのサラリーマンに、アリスさんと呼びかけられ告白される。邑上零という全く覚えのない相手に真聡は逃げ帰ってしまう。
その後日、山歩きに出た真聡は途中偶然立ち寄った神社で喋る白兎を見かけ、導かれるように跡をつけた。そして辿り着いたのはおそらく14年前の世界。
携帯も通じずお金も小銭くらいしか使えない。自分の家に帰るわけにもいかず途方に暮れていたところを救ってくれたのは、告白してきたサラリーマン邑上の面影のある高校生だった。
元の世界に帰れるまでと、真聡は邑上家にお世話になる。
邑上家は零と義姉の実花子とその子どもの善の3人。複雑な関係のなか、真聡は偽名をアリスと名乗り家事などできることをする。そして段々と零の人となりに触れ、その生真面目さ優しさかたくなな弱さに心惹かれていた。
好きになったのは自分のほうだったのだと知り、14年後再び会えると信じて覚えていてほしくて帰る最後の日に身体を繋げ。


不思議の国のアリスです。
土台にそれがあるのはわかりますが、あまり気にせずさらっと読めました。
白兎の不思議さも無理矢理出てきたわけでもなく、過去と現在のつながりも分かり易く、自然な流れで面白かったです。

真聡のお父さんの、脈があるなら押して押して押しまくれ!が真聡にいい感じに浸透しててよいですし、二人が再会して恋人同士になったあと、真聡が態度も変わらず年上になる零にも普通に対応してて、逆に零のほうが真聡に対して礼を尽くしてる感じが面白いというか。

まあ14年は長いけど、必要な隔たりだったのかと、これから大いにイチャイチャしてくれ。

今日の一作vol.328 千年恋空~ずっと好きな君へ…千年転生を続けるのも、それを待って出逢えてまた別れるのも辛い。

落ちこぼれの雷神・天は羊雲妖獣を眷属として、丁寧に雲を編み空を作る。
荒っぽい他の雷神や、召喚された先の人間たちにも馬鹿にされて落ち込むけど、力はない分綺麗な空を作ることを心掛けていた。
ある日天が召喚され、そこにいた頼久という天文博士は俺様な性格ながらも天を信じて、雨を降らすための雲を作るのに時間がかかるのに見守ってくれ、天の空を綺麗だと誉めてくれた。
共にいた二日間はとても楽しくずっと一緒に居たいなと思っていたら、なぜかともに旅をすることに。そして時がたち、頼久は寿命を迎えるが、一人になってしまう天に、生まれかわってまた会いにくると約束する。
その後百年ごとくらいに頼久は生まれ変わり、天に会うが、頼久のころの前世の記憶はなく、天はそのたびに苦しく思うが、会いにきてくれたことを喜び、そしてまた次の転生を待っていた。
そして千年。頼久の何回目かの生まれ変わりが料理人となり、店を開いた。虹色食堂には妖も常連客。そして生まれ変わりの仙助が養子としてやってきた。
今までは大人となった頃に天は出会ったが、今回は5歳児。天はいっぱい面倒みてやろうと思うが、仙助は男前で逆に天のほうが面倒みられたり。やはり記憶はないものの、二人はお互いに好きで仕方なくて。

手芸で空を作ったり、ドジで泣き虫な雷神なんてファンシーな始まりだったのに、段々と命のあり方や人間や自然に対する批判らしきものも折り込まれ、かなり深い話だと思います。
天は頼久の生まれ変わりを延々見続け覚えられてないけど、それでも死に際にはいつもまた会いにくるという彼を待ち続けた。でも辛いわけないよねー。
そして仙助は自分が生まれ変わりだと言われても関係ない。とは言いつつ、徐々に記憶を取り戻していき、そして自分の成すべきことを見つけるわけで、それはそれは二人の気持ちの動きが事細かに書かれて、ややクドいとは思いましたが、よーく分かる。
ラスト千年の意味がわかるわけですが、ちょいご都合主義で終わったかな。
面白かったけど、似たような話を他の作家さんで読んだけど、そちらはお色気と切迫感がすごかったので、勢いで納得したおわりでした。
もう少し天と仙助の情熱というか、情動という生々しさが欲しかったかな。
ファンシーさがぬけないので、なんかなって。