今日の一作vol. 359 運命の向こう側┅自分たちの世界が日常
オメガだけど、明るく前向きな春間。まだ発情の兆しがないため抑制剤は処方されていなかった。通常学校などアルファと場所を同じくするような場合には、そのことが知らされているはずで、万が一にも事故のないようになっているはずが、高校の入学式で、春間は運命のつがいの冬至と出会ってしまう。
会った瞬間お互いを求めあってしまい、それ以来二人は離れることなく過ごした。やがて社会人になり、もういつ結婚し、子どもを作るのかという段階でのある日、冬至の部屋で愛し合い、あくる日の朝、何かが違っていた。冬至と春間は二人でバース性のない世界に来てしまった、というか、平行世界の二人と入れ替わってしまったらしい。
バースに関することだけ面白いように変わっていたが、二人が単なるゲイの恋人同士でじれったいくらいゆっくりと付き合ってきて、セックスも不慣れならしい。
出会った瞬間からやりまくっていたこちらの二人は、オメガやアルファという前提でなく、愛し合うということに考えお互いの今までの気持ちを顧みる。
結局どんな始まりでも、好きなことにはかわりないと、ふたりは元に元に戻ろうとするのだった。そして。
他にはないオメガバースの話で凄く面白かった。
オメガでも全然明るい春間。むしろ発情や差別のない普通の男子というのはなんて楽なのかを実感していた。こちらの世界にずっといても、とも思うけど、決して今までの自分が嫌だったわけでもない。そのへんの葛藤とか冬至との関係について端的に書かれていて、ウンウンよく判ると読みました。
そしていきなりバース性の世界に行ってしまった二人はどうなんだろうと気になったりして。
オメガバースの話でこんなにすっきりと読めるとは思わなかった。日常的なオメガバースなのはいいです。
オススメです。