ゆかのんかズよみごと!!

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今日の一作vol.388 流浪の月…事実と真実は違う。二人でいることを責められるなら一緒にいられる所へ行こう

 

【2020年本屋大賞 大賞受賞作】流浪の月

【2020年本屋大賞 大賞受賞作】流浪の月

  • 作者:凪良 ゆう
  • 発売日: 2019/08/29
  • メディア: 単行本
 

やや常識外れで自由な両親に育てられた更紗は、父親が病気で死んだ後、母は男と蒸発してしまい、小4で伯母にひきとられた。

伯母の家には中学生の従兄弟がいて、夜中更紗の部屋にやってくる。

誰にも何も言えずに眠れぬ日々、公園でロリコンだと言われている男の人に、ある雨の日ついていった。

大学生の文は綺麗な人で優しく、更紗の気ままな行動に何を言うでもなく、受け入れてくれた。安心して眠ることができ、更紗は捜索願が出されても帰ることはなかった。

2ヶ月が過ぎ外に出かけあっという間に見つけられ更紗は誘拐事件の被害者、文は加害者として捕まった。

 

十五年が過ぎ、更紗は事件の被害者としていつも見られている。文は何もしていない。何度も言ってもストックホルム症候群だと言われて聞いてもらえない。それなのに世間は同情と好奇心で更紗をほっといてくれない。

同居している恋人はいるがセックスは苦手。結婚して子どもを持つことも想像できないのに、いつの間にか婚約者になっている。

そんなある日カフェで文を見つけた更紗。

時間を作ってマスターをしている文を見に行く。更紗だと気づいているのか。

不審な行動に恋人の亮は怪しみ更紗に暴力をふるう。逃げこんだ更紗を文は当然のように受け入れてくれて。

恋をしているわけでもない。でも一緒にいたい。

それだけなのに、二人がいることは非難される。安住の地はあるのだろうか。

 

 

本屋大賞受賞おめでとうございます。

夏に出版されて即日購入し、流し読みし、じっくり読むにはその時には気合いが必要と、放置してしまいました。

コロナの為時間はあるので、ためてある本を読んでおりますが、改めて読んでもズシンとくる話です。

更紗は文によって救われ、文も更紗だけが理解者で。

そう理解者。親友。心の友。解放者。

名をつけなくてはならないのなら、そんな感じ。

更紗の人生に関係する人々もそれぞれ色んな事情があるのが見えてくるのが凄いですね。

凪良さんの話は広がりがありますね。

BL畑出身の作家さん(大ファン)ですが、この頃は違う話も多く、前にも「神様のビオトープ」で感想書きましたが、色々あっても主人公が心強く持って生きていく、ラストの読後感がほうっとするのが私は好きです。

BLの話でも、ちゃんと恋愛を生き方を書いてくれるので、男同士だからということはあまり気になりませんので、興味がある方はぜひ。

この流浪の月は犯罪の被害者と加害者になってしまったあと、世間と当事者との何ともいえない社会の理不尽さが辛い。

耐えられないこともあるのに、更紗の強さに称賛を。

文の受容に感謝を。

ふたりならどこへも行ける。そう見守っていきたい。